遅咲きの狂い咲き

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zoom RSS MBAにある『最先端』の授業:CSR

<<   作成日時 : 2009/06/09 04:15   >>

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ここ最近「MBAには最先端なんてないよ」っていうエントリーを書いているけど、あるとするならば、それはCSRの分野かなって思っている。なぜなら企業は(といより誰もが)有効な方法論を確立したとは言えず、まだまだその場しのぎで問題に対処している企業が多い中で、アカデミックの世界が(NGO等と連動しながら)影響を与えうる分野だと思うからだ。

この「答えのなさ」感が、毎週木曜日の授業で僕の頭を刺激する。形だけの環境対策とか寄付行為とか、そんな浅い話じゃなくって、日本人が普段意識しない深いレベルでのCSRの議論。日本企業にも「襲いかかってくる」のは時間の問題だろう。

一例として、先週僕のグループがピックアップして授業でプレゼンをしたストーリーをご紹介。

場所はアフリカ、コンゴ共和国のカタンガ地方。銅・ダイアモンド・コバルトなどの豊富な鉱山で有名な地方。ただ内戦などで国土は荒れていて、世界最貧国のひとつでもある。

そのカタンガのレアメタルの鉱山では、児童労働が蔓延っている。何の安全対策もされていない鉱山で、時に事故で多数の死者を出しつつも、子供たちは素手同然でレアメタルを掘っている。
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最近では多くの鉱山は中国企業に所有されていて、鉱物は中国に輸出されていく。中国の成長を影で支えているのはアフリカからの資源輸出だ。

児童労働を放置している中国企業は悪か?彼らの言い分は、地元の運営会社を通して採掘を行っており、直接関知する立場にない、これはアフリカの問題であって中国の問題ではない、というスタンスだ。(最近の銅価格の下落でカタンガの銅鉱山から税金も給料も支払うことなく一斉に引き上げたなんていう話を聞くと、まあ中国企業は悪だなとは思いたくなるが。。。)

では政府が関与すべきか?もちろん児童労働は法律では禁止されているが、そんなものは効果がない。なぜなら、国家レベルでみれば、道路などのインフラ整備を安い受注価格で担っているのも中国国営企業で、さらには武器の輸入、そしてその裏で横行しているであろう賄賂等々もあり、コンゴ政府としては児童労働は中国からのその他多くの便益を得るためには見過ごしても仕方がない「コスト」であるという理解だ(もちろんそうは言わないが)。
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欧州の鉱山企業は、(彼らもそれほど褒められるような運営を行っているわけではないものの)中国企業が国際標準の安全対策などを無視して案件を受注していることを国際団体に提訴したりはするものの、コンゴ政府自体がこんなでは実行力など何もない。

さて、この話が日本にどのように繋がるか?

OxfamのようなNGOは、この手の問題を解決するための方法として、児童労働によって生産される製品を買うのはやめよう、という消費者啓蒙の動きをする。カタンガのケースでは、レアメタルが主に携帯用の電池に使われていることから、標的はソニー、ノキア、サムスンのような多国籍企業になるのだ。

(ちなみに話はそれるが、カタンガのレアメタルはアフリカでの戦争での原因になっていて、ルワンダ軍がコンゴからレアメタルを盗んで資金源にしているという話がある。で、この戦争の名前が「PlayStation War」と呼ばれているのだ。盗まれたレアメタルが携帯・PC・ゲーム機などに使われているからという意味合いと、先進国にてゲームの中でどんどん人が死んでいくようにカタンガでは子供が鉱山に送り込まれて(先進国の需要を満たすために)死んでいく様をかけているのだ。。。)

アフリカで児童労働?まあ可哀想だけど私には関係ないよね、なんて言っていると、思わぬところで消費者団体からの直撃弾を食らう。世の中の諸問題の多くは直接の当事者では解決できないため、消費者からの評判に敏感で、解決に乗り出そうとするであろうバリューチェーンの最後にいる大手企業を標的にするのが有効だというのが最近の流れだ。

ノキアのスポークスマンは「児童労働の証拠は見つかっていないが、もし真実ならそのような部品は仕入れない」と言っている。でも、中国の部品メーカーがどのサプライヤーから仕入れていて、そのサプライヤーがどのサプライヤーから仕入れていて・・・とバリューチェーンを遡るのってまったく簡単じゃない。しかも中国の国営企業が絡んでいるので、どこかでブラックボックスにぶち当たる。

仮に特定できて、その商品を仕入れなくすれば丸く収まるかというと、企業としてそう言いきるのは簡単だけど、職がなくなった子供たちは学校に行くどころか食べものにも困ってしまう。それでいいのだろうか。貧困にあえぐ子どもを救うのは政府の仕事であって企業は関係ない?よくある対策としてはフェアトレードのような形でNGOなり政府なりが証明書をつけ、フェアトレードの取引で得た収益の一部を地域に還元する(例えば学校を作る)みたいな方式がありうるだろうか。誰が主催するかによって色々実務的な問題はあるにせよ、企業が積極的にやったって別にいいよね。

他のグループが発表していたインドの手織り絨毯の児童労働の事例では、NGOが査察にでも行こうものなら文字通り殺されかねないような(インド人も近づかない)危険な地域で生産されているようで、そこまでいくとどうしようもなさそうにも思える。マイクロファイナンスで織機を買えるようにして経済的に自立させてあげることが児童労働から解放させるひとつの方法かもしれないが、、、と、まあこんなかたちで、どこまでも問題の連鎖は終わることはない。

上記はあくまでも一例。大手企業がバリューチェーン全体に責任を持つべきという議論に納得する人もアンフェアだと思う人もいるかもしれないが、どう思うかに関わらず企業が今後このような事例にNGOからの抗議運動を通じて直面することは増える一方であろうということは間違いない。人権・環境・貧困・・・火種はいくらでもある。

バリューチェーンを見直すにしても、CSR専門の部署を設けるのか、サプライヤーと接する部署が日常業務として責任をとるべきなのか、これも簡単ではない。いかにコスト高となる「倫理的な」調達を個人や部署の業績評価と連動させるのかなど、組織運営上の問題は想像する以上に複雑だ。働くインセンティブと合致しない限り人は動かないのは明白だもの、掛け声だけでは本質的な変化はおきない。

CSRっていうと、儲けたお金で寄付行為をしようとか、マーケティングツールのひとつとして企業イメージの向上につなげようとか、そんなレベルの話に思われることが少なくないけど、そうも簡単な内容ではないということが多少なりとも伝わったら幸い。企業の存在意義さえ問われていると言っても過言ではない議論だと思う。

将来経営者になるべく勉強しているMBA生が、こういう気づきをすることなく卒業していいのかな、とは個人的に思っているんだけど、どうかな。

(Oxfordが社会起業なりCSRに力を入れていると言っても、結局選択授業の人気は看板授業でもあるファイナンス系に集中しているのが現実。CSRの受講生はたったの15人程度(隣のM&Aの授業は満席)。それでもその授業を無くさないところには心意気を感じるし、最先端であるからこそ15人しかいないとも思っているが。手法が確立されて誰もが学ぶべきものになるにはまだまだ時間がかかるだろう)

最近Corporate ValuationとかTaxationとか、教科書読めばわかるような、昔からの理論を先生に「教えてもらう」系の授業にすっかり飽きてきて、CSRとかBusiness in Chinaみたく、色々な矛盾をどのように乗り越えていくかみたいな思考訓練系の方が楽しく感じ始めている。

偉そうなことばかりブログに書いているけれど、ちょっと授業の選択を誤ったかな(笑)

(ちなみに、上記のカタンガのケースで調査・エッセイ執筆・プレゼン資料作成にかけた時間は5人のチームで3日間くらい(もちろん他の授業や課題もやりながらだけど)。それくらいのスピード感で次から次へと課題をこなしていくのがOxfordのMBAの日常。頭がパンクすること請け合い。)

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